TMSの基本原理
Basic principle of TMS
1831年に英国のファラデーによって発表された
《ファラデーの電磁誘導の法則》が、磁気刺激の基本原理です。
TMS治療で用いられる磁気刺激の原理そのものは《ファラデーの電磁誘導の法則》に基づいています。
- ①コイルへの瞬間的な通電により、
- ②コイルに対して垂直に磁場が生じます。磁気は頭蓋骨を貫通して脳実質(脳そのもの)に届き、
- ③コイルに平行して(電流とは反対方向に)渦電流(うずでんりゅう)を発生させます。
この発生した渦電流が、脳の神経組織(ニューロン)を刺激します。
つまり磁気刺激とはいうものの、最終的には電気での刺激になります。
うつ病へのTMS治療でよく使用される8の字コイルの場合、2つのコイルの接点は電流が2倍になり、発生する渦電流も最大になります。一方で、頭部(脳表面)はカーブしているため接点から離れるほど脳からも遠ざかり、結果としてコイルの接点以外で発生する渦電流は非常に小さくなり、ほとんど影響を与えません。
このため、治療部位をピンポイントで刺激することが可能です。
なぜ磁気刺激なのか?
最終的に電気で刺激するのなら、磁気を使わず最初から電気で刺激すればよいのではと疑問に思われるかもしれません。
人体の最重要部位である脳を守る頭蓋骨は、非常に高い絶縁性(電気抵抗)を誇る強固な鎧です。電気では狙った部位に届くまでに90%以上のエネルギーを失うことから、十分なエネルギーを届けるためには何倍も強力な電流が必要になり、結果として非常に強い苦痛を感じることになります。
実際に磁気刺激以前に《経頭蓋電気刺激法(TES)》と呼ばれる電気による刺激法は開発されていましたが、痛みが強すぎるため、あまり普及しませんでした。
一方で、磁気は頭蓋骨でエネルギーを失わずに簡単に貫通するので、効率的に刺激できます。
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