正月病~年末年始の休暇明けにやる気が出ない~
年末年始にかけて、公私の忙しさや生活リズムの乱れから疲労とストレスが蓄積し、正月明けに「体がだるい」「やる気が出ない」「調子が出ない」と無気力になる人は少なくないと思います。
これが数日の不調ならそれほど心配する必要はありません。しかし、その不調が数週間続くようであれば、《適応障害》や《うつ病》などを発症している可能性があります。もし、うつ病を発症してしまうと本格的な治療が必要になってしまうため、そうならないためにも予防や早めの対処が大切です。
この記事では、正月病の症状・原因や、その予防と対処法について解説します。
正月病とは
《正月病》とは、年末年始の休暇明けに心身に現れる不調(ストレス症状)の総称です。
正月病は医学的な疾患名ではなく、マスメディアなどで使われる言葉です。その内実は「正月ボケ」程度の軽いものから、本格的なうつ病まで、さまざまな状態を含んでいると考えられます。
「正月疲れ」「正月うつ」などもおよそ同じような状態で、欧米でも同じ時季の休暇明けの不調が“new year's blues”や“holiday blues”“post-holiday blues”などと呼ばれています。
年末年始は一般にイベントが多く、公私ともにスケジュールが過密になりやすいため、詰め込みすぎた予定をこなすなかで想像以上に疲労とストレスが蓄積している可能性があります。実際、国内のある民間調査によれば、約7割の人が正月病を経験したことがあるという結果でした[1]。
前述の通り正月病自体は医学的な疾患名や専門用語ではありません。しかし、深刻なものではその実体が《適応障害》や《うつ病》などの精神疾患やその予備軍である可能性があり、注意が必要な状態です。
なお、時季的に《冬季うつ病》と関連している可能性もありますが、正月病と冬季うつ病が直接関係しているわけではありません。
正月病の症状
正月病は、年末年始の疲労やストレスの蓄積から身体とメンタルに大きな負担がかかっている状態であり、心身にさまざまな症状が現れます。
正月病の精神症状
正月病の精神的な症状は以下のようなものです。
- 気分が落ち込む
- やる気が出ない
- イライラする
- 集中できない
- 記憶力・判断力の低下
正月病の身体症状
正月病の身体的な症状は以下のようなものです。
- 体がだるい、疲れがとれない
- 食欲がわかない、食べ過ぎる
- 下痢・便秘
- 頭痛・肩こり
- めまい・耳鳴り
- 眠れない、朝早く目が覚める
- 朝起きられない、日中眠い
正月病の原因
正月病の原因としては、以下のようなものが考えられます。
- 目白押しのイベント:年末年始は、クリスマスや忘年会、正月に新年会と、イベントが他の時期より多めかもしれません。酒愛好家は大義名分を得て小躍りしたい心境でしょうが、そういう場が苦手な人もいます。どちらにせよ、連日の飲み会は暴飲暴食につながり、健康を害する可能性があります。
- 過剰な商業主義:クリスマスや年末年始は、セールや初売りがあちこちで行われ、店の派手な飾りつけやイルミネーションがあふれかえり、街中が活気づいてにぎわいますが、そのにぎわいが(参加していない自分を浮き彫りにすることで)かえって孤独感につながることもあります。
- 帰省:年末年始は帰省して家族と過ごすという人もいると思いますが、実家でのびのびできる人ばかりではありません。家族関係や立地などによっては、あまりくつろげない可能性もあります。親戚や地元の人が集まる新年会がある人もいるでしょう。帰省しない人にとっては、友人たちが帰省してしまうことで孤独に過ごさざるをえないケースもあります。
- 度重なる出費:クリスマスプレゼントや飲み会、お年玉など、年末年始は外気だけではなく懐も寒くなります。
- 1年の反省と後悔:新年を迎えるにあたり、1年間の失敗や後悔などネガティブな体験・感情を思い出して気分が沈んだり、新しい1年を不安に思ったりするかもしれません。
- 不規則な生活:平常時、仕事や学校があるときは規則正しく生活している人でも、長期休暇中は油断して(あるいはここぞとばかりに)夜ふかし、朝寝坊の毎日を送り、生活のリズムを乱してしまうということはよくある話です。しかし、睡眠時間の乱れは食事の時間や取り方が不規則になることにもつながり、食事を適当にすませてしまうことで栄養バランスも悪くなりがちです。お酒が入ることで、夜ふかしや朝寝坊の度合いが大きくなり、昼夜逆転してしまうこともよくあります。
- 疲労とストレス:年末進行の忙しさで十分に休息できずに疲労が蓄積する可能があります。過密なスケジュールは往々にして睡眠不足を招きます。
正月病の予防と対処、7つの方策
正月病の予防と対処には、日々の生活習慣を改善することが大切です。もちろん、生活を改めるのに律儀に新年を待つ必要はありません。
1.十分に休養する
年末年始は忙しいからこそ、意識して休息をとり、休日にはゆっくり休養する時間をもうけましょう。
2.規則正しい生活を送る
長い休みだからといって、夜ふかしや寝坊をして生活が不規則にならないように気を付けましょう。睡眠のリズムを守ることは、快適な睡眠と規則正しい生活に重要です。毎日同じ時間に寝て、毎日同じ時間に起きる習慣を守りましょう。起床後にはまず朝日を浴びましょう。
また、バランスの良い食事を毎日3食、決まった時間にとるようにしましょう。
3.飲みすぎない
飲み会など飲酒する機会が多いからこそ、飲みすぎないようにしましょう。連日連夜飲み会が続くような場合は、健康のために適度に辞退するとよいでしょう。
あなたの健康はあなた自身が管理する必要があります。誘う人は、あなたの健康に何の責任も負いません。
4.孤立しない
周囲の友人・知人が帰省してしまうからといって、完全に一人きりで過ごす義務はありません。イベントに参加したり、帰省しない人同士で集まったり、新たな交流を開拓したりなど、社交的に過ごす方法はたくさんあります。
一人で過ごすことが苦にならないなら、あえて一人でゆっくり骨休みするのも悪い選択ではありません。
5.リラックスして過ごす
長期休暇は趣味にじっくり時間をついやすチャンスです。
買うだけで積みっぱなしの長編小説や、録りためておいたドラマや映画を、腰をすえて鑑賞する時間を確保しやすいでしょう。好きな音楽を聴いたり、創造的な活動を行ったりなども心身のリラックスとストレス解消に役立ちます。
6.運動する
適度な運動は心身の健康に直接良い影響を与えます。夜もよく眠れるようになります。
7.普段通り過ごす
長期休暇であっても、物理的にも科学的にも普段の休日と変わりません。必ずしも非日常にひたる必要はありません。普段のスタイルを崩さないように、いつも通り過ごすという選択は間違っていません。
正月病は受診すべきですか?
正月病は基本的には一時的なストレス症状と考えられ、数日調子を落としたからといって、すぐに医療機関に行く必要はありません。前述の対処法を参考に、規則正しい生活と健康を取り戻してください。ほとんどはそれで十分でしょう。
しかし、体調不良が長く続く場合は適応障害やうつ病を発症している可能性があります。もし、気分の落ち込みや眠れないなどの症状が日常生活に支障をきたしているような場合は、医療機関に相談してください。特にこれらの症状がいくつも2週間以上続いているような場合はうつ病を発症している可能性があります。
まとめ
《正月病》は、年末年始の休暇明けに心身に現れる不調(ストレス症状)の総称です。正月病は医学的な疾患名ではありませんが、不調が数週間続くようなら《適応障害》や《うつ病》などが隠れている可能性があります。
正月病では、「気分が落ち込む」「やる気が出ない」「イライラする」などの精神症状や、「体がだるい」「疲れが取れない」「眠れない」などの身体的な症状が現れる可能性があります。忙しい年末年始の疲労やストレスの蓄積に心身が追い付いていない状態で、生活リズムの乱れなども一因になっていると考えられます。
正月病の予防と改善には、睡眠をしっかりとる、バランスの良い食事を毎日3食とる、適度に身体を動かす、など健康的な生活習慣が有効です。
正月病は一時的なストレス症状と考えられるものの、いくつもの症状が2週間以上続いているような場合は、うつ病の可能性がありますので医療機関に相談してください。
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うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。