忘年会に参加したくないのはうつ病だから?

年末が近づくにつれ、忘年会シーズンの到来を感じさせる風景が増えてきます。
一昔前は、「飲む口実」とばかりに喜んで参加する人が多かった飲み会ですが、最近は会社帰りに上司と部下が一緒に飲みに行く姿は昔よりも少なくなっているように感じます。

「お酒の飲み過ぎはカラダに悪いし、次の日も会社に行くのがつらくなるから、飲み会の参加は個人の自由でいいのでは?」

まったくもって正論です。
しかし、忘年会は1年に1度のことであり、一緒に頑張った仲間と「今年一年お疲れさま!」とねぎらいあい、「来年も頑張ろう!」と一致団結する儀式的な意味も持ちます。1年のうちのたった数時間のことなのに、あなたがこの記事に辿り着くほど、その忘年会に参加したくない理由はなんでしょうか?
もし、ただ参加したくないからという理由だけで、どんな手を使っても避けたいほど忘年会が苦痛なら、そこには心の問題が隠れているかもしれません。

忘年会に参加したくない人は意外に多い?

全国の20代~40代の働く男女500人を対象に、田辺三菱製薬株式会社が行った忘年会に関するインターネット調査では44%と約半数近くの人が「会社の忘年会に行きたくない」と思っていることがわかりました。

会社の忘年会に
参加したいと思いますか

グラフ:参加したい29.6%、どちらかと言うと参加したい26.2%、どちらかと言うと参加したくない29.0%、参加したくない15.2%

参考:田辺三菱製薬株式会社

その理由の多くは人間関係といわれています。特に上司と飲むことに抵抗がある人が多く、

  • 上司が嫌い
  • 話がつまらないから時間のムダ
  • 二次会に連れて行かれるのがイヤ
  • 気をつかうからつまらない

など、なかなか厳しい意見が出揃いました。
若い世代は男女ともに忘年会をつまらないと考える人が多いようですが、中でも女性は20代で50%、30代では48%が「参加したくない」と答えたそうです。
ビジネスにおけるお酒の席では、女性はどうしても“お世話係”になりやすいところも参加したくないと思わせてしまう理由のひとつでしょう。さらに、その役目を担うのが当たり前という雰囲気では、飲み会はたちまち苦痛な時間に変わってしまいます。

上手な誘い方と断り方のコツ

忘年会はいうなれば会社の行事です。
たかが飲み会とはいえ、誘い方や断り方ひとつで、その後の人間関係に影響することも考えられます。つまらないことで仕事がしにくくなったり、ストレスをためる原因をつくったりしないように、上手な誘い方と断り方を身につけましょう。
大切なのは、誘う側も誘われる側も相手の立場になって、言葉を選ぶことです。

忘年会への誘い方のコツ

会社主催の忘年会ともなれば、幹事はいつもの業務の合間に時間を見つけて、本番に向けて準備をすすめていることでしょう。
参加率が低いと困る、自分はこんなに苦労しているのだからと、つい周囲に参加を強要したくなる気持ちもわかりますが、そこはぐっとこらえてください。
忘年会に誘う側は、「参加するのが当たり前」と考えず、「もしよかったら参加しない?」と誘われた側に選択の余地を残してあげましょう。強制的な雰囲気などないほうが、参加してみようかなとも思えるものです。

忘年会の断り方のコツ

誘われた側も、「行きたくありません」とバッサリ断るだけでは冷たすぎると受け取られかねません。
まずは「誘ってくれてありがとう」と相手の気持ちを受け止め、「せっかくですが、その日は行けません」「残念ですが、あいにく予定があって」「申し訳ないのですが、お酒が苦手なんです」とクッション言葉を挟んだやわらかい断り方をしましょう。

一瞬のやり取りを丁寧にしただけで、苦手だった相手との人間関係がスムーズになって、その後の仕事がしやすくなったという例もあります。
相手を思いやるコミュニケーションは人間社会の潤滑剤です。

繁忙期の疲労がうつ病を招く可能性も?

誰誰もが忙しく過ごす年末ですが、ビジネスだけではなく、プライベートでの飲み会も増え、体力の限界を超えて年越しを迎える人も少なくないことでしょう。
微熱や頭痛程度なら薬を飲んで仕事や忘年会に向かい、身体のだるさ、疲れなどには何とかなると突っ走ってしまうこともあるでしょう。

単なる疲れであれば週末にゆっくり休むことで回復が見込めますが、怖いのは、その症状がうつ病の初期症状である場合です。うつ病はそもそも精神面だけではなく身体面にも症状が現れやすく、「疲れやすい」「身体がだるい」という症状は珍しくありません。
うつ病を発症した状態で無理をすれば症状はどんどん重くなり、年末の休暇が取れたころには、休暇明けに仕事へ復帰することが難しいほど心身が疲弊しきっている可能性もあります。

ただの疲れだけではなく、気分の落ち込みを感じたり、以前は楽しんでいたことも楽しめなくなっていたり、寝つきが悪いなど睡眠にも問題が出たりするような場合は、うつ病を発症している可能性があります。そのようなときは、できるだけ早く心療内科や精神科で相談してみましょう。
特に、以前は飲み会が好きだったという場合は要注意です。

ストレスやうつ症状について
ぜひご相談ください!

飲酒の判断は医師に相談しましょう

ところで、うつ病を発症し、薬物治療を受けている状態で忘年会に誘われた場合、お酒は飲んでもいいのでしょうか?

飲まずに済むなら、できる限り飲まないでください。もし、飲まざるを得ないことが予想されるなら、事前に主治医に相談しておきましょう。薬の種類によっては、アルコールとの相性が悪く、効果が強く出るなど好ましくない影響が出る可能性があります。

うつ病は早期発見・早期治療が重要

「忘年会に行きたくないなあ」という気持ちがあるからといって、うつ病とは限りません。しかし、もし何日も気分が晴れなかったり、会社の飲み会や忘年会、人と集まる場所への強い拒絶感があったりというような場合は、うつ病を発症している可能性があります。
いきなり精神科は……という方は、まずはセルフチェックを試してください。

うつ病は早期発見・早期治療が重要です。2週間以上、気分の落ち込む、以前は楽しんでいたことも楽しめない、疲れが取れない、寝つきが悪いなど生活に支障が出ているような場合は精神科・心療内科を受診してください。

ストレスやうつ症状について
ぜひご相談ください!

お酒には、「飲みニケーション(=飲み+コミュニケーション)」という合成語が生まれるくらい、人と人のコミュニケーションを深める要素もあります。誘う側も誘われる側も、その後のお仕事にプラスとなる忘年会になりますよう、心からお祈りしております。

参考:

渡邊 真也

監修

渡邊 真也(わたなべ しんや)

2008年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニック院長。精神保健指定医。

品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬に頼らない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

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