うつ病の人は「誰もわかってくれない」と苦悩している

うつ病は「心の風邪」といわれることがありますが、これは「誰もがかかりうる病気」であるという例えであり、風邪のように数日ゆっくり過ごせば治るという意味ではありません。
うつ病で苦しんでいる人は数多く、一方で自分自身がうつ病であると周りに伝えることができない人も大勢います。
つらい思いをしているにもかかわらず、「怠けている」「甘えている」「やる気がない」などと誤解されてしまうことがあり、大勢のうつ病の人が、職場の人たちや家族から理解されないことに苦しんでいます。

この記事では、家族や職場の人がうつ病になったときに、周りの人が何に気を付けて、どのように接するべきかについて解説します。

うつ病の人は周りの人に理解されないことに苦しんでいる

「うつ病は心の風邪」という言葉は「誰もがかかりうる病気」という意味ですが、風邪のように簡単に治る病気であると誤解してしまう人が少なくありません。
うつ病はせきがでたり、熱がでたりするような、目に見えて分かりやすい病気ではありません。
そのためうつ病である人とそうでない人では、うつ病という病気に対する理解の差がとても大きくなりがちです。

うつ病になってしまうと、気分が落ち込んでしまって何もやる気が起きなくなります。またぐっすりと眠れなくなり、身体が疲れて重く、食欲もなくなってしまうことがあります。
しかし周りの人からは、「頑張ればできる」「気合いが足りない」「怠けている」と言われてしまうこともあり、本人が大きなショックを受け、さらに病状を悪化させてしまうこともあります。

うつ病の本人からすると、何をする気も起きずに、仕事にいけず、食事を食べる意欲もわかず、お風呂にも入れないような状態となってしまうことで、「このままじゃだめだ」という思いと現実のギャップが大きくなっています。
そして自分自身も「自分の甘え」「怠けもの」と考えてしまい、さらに落ち込んでしまうことになります。うつ病の特徴として、このような自責の念を持ってしまう症状がよくあります。

職場によっては、うつ病への理解どころか偏見を持っていることもあり、陰湿な態度で本人を追い込んでしまう例も少なくないようです。
そのようなことがあると「仕事に復帰することができない」「再就職も難しい」と考え、焦って無理をし、さらに悪化させてしまうという、悪循環におちいることもあります。

うつ病と診断されたときにご家族や職場に必要な対応は?

うつ病になると気分の落ち込みが激しく、憂うつな気分が続いてしまいます。何もやる気が起きませんから、本人はただ横になっていることしかできません。本人にとってはそれほどまでにつらい状態であり、決して「甘え」や「怠け」によって横になり続けているわけではありません。

ご家族や職場の人が、「早く良くなってほしい」と考えるのは自然なことですし、横になっている姿を見続けると「甘え」や「怠け」に見えてしまうのも、うつ病のことをよく知らなければ無理のないことです。
しかし周りの人たち以上に本人は、なかなか良くならない自分自身に焦りを感じており、「もう良くならないんじゃないか」という不安を抱えながら生活しているのです。

ご家族や職場の人たちには、これらのことを理解して本人のサポートをしていただきたいと願っております。
うつ病は「薬を飲んだらすぐに治る」という病気ではありません。できるだけ早く本人に合った治療を行い、地道に治療に取り組む必要があります。

またうつ病は再発しやすい病気です。少し良くなると、薬を勝手にやめてしまう人がいますが、急に薬をやめてしまうことで再発のリスクが高くなりますし、離脱症状を起こしてしまうこともあります。
必ず医師の指示に従って、適切に治療に取り組んでいく必要があると理解しておきましょう。

周りでサポートする人たちが積極的にうつ病を理解する

うつ病がどういう病気かは徐々に知られるようになり、うつ病の人を理解しようとする気持ちを持っている人が増えてきたように感じます。
うつ病を正しく理解し、治療に対する正しい知識を持つことは大切なことです。

本人にはうつ病を打ち明けにくいという気持ちや、打ち明けても理解してもらえないのではという不安が強くあります。これはうつ病による特徴的な思考パターンです。
周りで支える人たちが、病気のことを理解しようという態度であれば、本人も安心して治療に取り組むことができることでしょう。

うつ病は病気であると理解することが重要です

うつ病は「怠け」や「甘え」と誤解されがちで、本人も同じように考えていることが少なくありません。重要な仕事を任されないことや、単にサボりたいと誤解されることで、うつ病患者を追い込んでしまう可能性があります。

うつ病患者は「自分が悪い」と罪悪感を抱きがちです。しかし、それはうつ病という病気によって引き起こされる症状であり、本人の努力不足などではありません。
風邪を引いたときや、病気をしたときに治療をするように、うつ病も治療をすれば改善しうる病気です。

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渡邊 真也

監修

渡邊 真也(わたなべ しんや)

2008年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニック院長。精神保健指定医。

品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

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