うつ病と自殺の関係とは~自殺防止のためにできること~
うつ病の診断基準のひとつに「死について繰り返し考える」というものがあります。
この診断項目を見ても分かるように「うつ病」と「自殺」は密接な関係があります。ある意味、自殺はうつ病の症状であるといっても過言ではないのです。
そのため家族や周りの人が、自殺を考えているような告白を受けた場合には、
「どうせ自殺なんてしないだろう」
「口だけで行動は起こさないだろう」
と安易に考えてはいけません。
うつ病は適切な治療が必要です。もしも身近な人から「死にたい」と告白されたら、品川メンタルクリニックにご相談ください。
自殺統計について
警察庁が発表している自殺統計を平成21年から見てみると、年々減少していましたが、最新の統計である令和2年に増加しています。
また文部科学省の調査では児童・生徒の自殺者は、1986年以降令和元年までの調査において、ほぼ増加傾向にあり、平成29年には約30年間において児童・生徒の自殺者がもっとも多くなっていることも分かっています。
また厚生労働省の発表している死因順位を見ると、15歳~39歳までの死因で一番多い割合のが「自殺」となっています。
さらに日本財団の調査によりますと、18歳~22歳の4人に1人が自殺を考えたことがあり、10人に1人は自殺未遂を経験したことがあるという結果を発表しています。
このようにあらゆる統計を見てみると、自殺者総数は減っているものの若年による自殺が増加している傾向にあります。これは先進国のなかでは突出している数字であることも分かっています。
自殺者は減らすことができるものだと理解しておかねばなりません。未だにわが国では自殺者に対して「個人の自由」などと無関心になってしまいがちですが、周りの人たちが適切に関わることで防ぐことができるのです。
参考:文部科学省 令和元年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果
自殺の原因~厚労省の調査ではうつ病が1位~
わが国の自殺者は、1日あたり約55人が自殺している計算になり、30分に1人以上の人が自殺していることになります。
15歳~39歳までの死因で一番多いものが「自殺」であり、自殺未遂はその何倍もあると言われてることから、人ごとではないのです。
自殺の原因は人それぞれで、さまざまなシーンの中で存在します。どのようなシーンで自殺の原因が生まれるのか見ていきたいと思います。
職場での自殺の原因
参考:付録2 職種別、原因・動機別自殺者数 【厚生労働省 平成30年中における自殺の状況】
厚生労働省の調査によりますと、職場の自殺原因での1位は「仕事疲れ」となっています。2位には「職場の人間関係」となっており、職場内での過酷な状況が浮き彫りとなっていることが分かります。
さらに「仕事疲れ」での自殺を細かく年齢別に見てみると40~49歳がもっとも多く、次いで50~59歳が多くなっていることが分かっています。
また、この職場問題に関する自殺においては、月曜日の朝に自殺する人がもっとも多くなっていることも注目すべきデータです。
どのような職場環境にあるのかは職場ごとに違うものの、厳しいノルマや勤務状態が考えられ、そのような状況下において疲弊している人が多いことが考えられます。
特に仕事疲れでの自殺者が多い40代や50代については、会社においては中間管理職などリーダー的な存在である場合が多くあります。また仕事で疲弊しているとはいえ、転職市場も厳しく退職することも困難です。
家庭においても住宅ローンや教育費など、多額の資金が必要な時期ですので、それらのプレッシャーも大きく圧し掛かってしまいます。職場でも家庭でも逃げ場を失くしてしまったときに、自殺への衝動が大きくなってしまうのです。
健康問題での自殺の原因
参考:付録2 職種別、原因・動機別自殺者数 【厚生労働省 平成30年中における自殺の状況】
健康問題での自殺の原因を見てみると、「うつ病」が原因の1位となっています。
「うつ病」を原因とする自殺は、職場問題や学校生活、家庭問題などさまざまなシーンのなかで一番多い原因となっています。
冒頭でもお伝えしましたが、うつ病の診断基準に「死について繰り返し考える」という項目があることでも分かりますが、うつ病は死に関わる病気であるといえます。
厚生労働省の調査でも分かるように、健康問題で自殺した人のなかでうつ病の割合は40%を超えています。この割合の高さから見ても、自殺とうつ病の関係性がとても高いことが理解できます。
そのためうつ病の人が「死にたい」と自殺願望が見られたときには注意が必要で、周りで関わる人は「どうせ自殺なんてしないだろう」と安易に考えないようにしなければなりません。
特に「死にたい」という気持ちは誰に対しても打ち明けるわけではなく、あなただからこそ打ち明けることができたのです。
この「死にたい」という思いには、「死にたいくらい辛い」「助けてほしい」という想いが込められていますから、その気持ちに共感し寄り添うことが大事です。
学校生活での自殺の原因
参考:付録2 職種別、原因・動機別自殺者数 【厚生労働省 平成30年中における自殺の状況】
学校生活での自殺の原因を見てみると、中学生・高校生・大学生それぞれに違う悩みを抱えている状況が分かります。
中学生においては、「その他学友との不和」が割合において1位となっています。
まだまだ中学生は人間関係を築く力が未熟なだけに、トラブルも多くなる時期です。仲間外れや悪口、いじめなどにおいて孤立してしまうことが自殺に原因となることがありますから、子どもが悩んでいるときにはしっかりと話を聞いてあげることが大事です。
高校生においては、「その他学友との不和」が割合において1位となっており、「入試に関する悩み」が2位となっています。人間関係の悩みのほかに、大学入試での悩みが大きくなることが分かります。
もちろん合格しなかったからといって敗北ではなく、長い人生において見れば、その経験によって成長することも可能です。
とはいえ、学歴が大切だと考えている高校生にとって大学入試はとても重要なもので、望みが叶わないとなるとその厳しさや苦しみを味わうことになります。
大学生においては、「学業不振」「その他進路に関する悩み」が1位となっています。大学での成績は、卒業だけではなく就職に関してとても大きな影響を与えることになります。
そもそも大学に入学したのは希望している企業などへの就職と捉えている人も多いですから、このつまずきは将来の悪影響と考えてしまい悲観してしまうのです。
うつ病と自殺について~うつ病と自殺の関係とは~
冒頭からお伝えしている通り、うつ病と自殺には密接な関係があるといえます。
世間一般ではうつ病に対する理解が深くなったわけではなく、 「気の持ちよう」「気合でなんとかなる」と考えられがちです。
そういった理解のなさがうつ病の人を苦しめることになり、結果的に自殺に追い込んでしまうことも多くあります。ここではうつ病患者がどのような思いで過ごしているのか、また状況に気付いた家族や友人ができることについてお伝えします。
うつ病患者が発する自殺のサインとは?
うつ病は「心の風邪」と言われることがありますが、風邪のようにすぐ治るという意味ではありません。風邪と同じように誰でも可能性のある病気だということです。
「自分は絶対にうつ病にはならない」
そう考えている人は少なくありませんが、うつ病の人は年々増加している傾向にあります。
真面目で几帳面な人が仕事や学業に取り組み、思うような成果が現れないような場合にはさらに頑張って結果を出そうとします。
「結果が出ないのは自分の頑張りが足りないから」
「自分が甘えているから成績が伸びない」
などと捉え、ストレスをどんどん積み重ねていくことになります。
ストレスが重なると、うまくストレスを発散させることができずに、うつ病になるリスクがとても高くなります。
休んでも疲れが取れず、うまく眠ることができないこともあります。仕事や勉強の意欲も低下しますが、「甘えている」という自分の思いとのギャップから、いつしか「死にたい」という気持ちが大きくなってしまいます。
死にたいという気持ちが強いときには、イライラ感が強く、時には自分自身の身辺整理をするようなこともあります。
もしもそのような傾向を感じたら、なかなか自分自身の力で何とかすることはできません。専門医に相談して、適切な治療が必要なのです。
新しい環境と長期連休明けが
自殺に関連することが多い?
うつ病の人が自殺する場合、悲観するような出来事がある場合だけではなく、本人にとって負担となることはすべて自殺につながると考えておかねばなりません。
警察庁が発表する自殺統計に基づく自殺者数の推移を見てみると、3月と5月に自殺が増えていることが分かります。
参考:警視庁「平成30年中における自殺の状況 資料」
3月というと、卒業や終業式、入試の発表、転勤や異動の発表、就職、引っ越しなど、「新しい環境」になる行事がたくさんあります。
それらは全て悲観するような内容ばかりではありませんが、本人にとって大きな負担になることは間違いありません。そのため新しい環境がうつ病の原因となってしまい、結果的に自殺へと追い込んでしまうことになるのです。
また、5月というと世間一般には「五月病」という言葉があります。
受験や就職といった大きな目標を達成し、4月から始まった新しい生活による緊張感が、ゴールデンウィークに燃え尽きてしまったような状態となってしまうことを指します。
五月病というのは病名ではありませんが、うつ病が関連していることも多くあります。
ゴールデンウィークが終わる頃を迎えて、職場や学校に行くことがストレスで自分を追い込んでしまい、「死にたい」という気持ちが強くなってしまいます。
うつ病から自殺までのプロセス
うつ病は、とても高いストレスが積み重なっている状態で引き起こします。
人間関係の悪化や入試の失敗、仕事疲れなどが持続している状態であれば、気持ちが休まることがなく生活上においても大きな影響を与えることになります。
うつ病を引き起こしてしまうと、抑うつ状態が強くなり仕事や学業だけでなく、生活全般において意欲が低下します。体が重く疲れが取れない状態が続き、夜間眠れないことも多くなります。
その状態を抜け出そうとして頑張ろうとしても、思うように体が動きません。気持ちを奮い立たすこともできません。
生きたいという気持ちは強いものの、もうどうしようもないという絶望感が支配してしまい、いつしか「死にたい」「死ぬしかない」という気持ちが強くなってしまうのです。
相手に耳を傾ける周囲の対応が必要
周りで関わる人が、本人のうつ症状や自殺企図に気づくことがあります。
うつ病と自殺には密接な関係がありますので、「死にたいと言っていても死ぬことはない」と安易に考えてはなりません。
もし「死にたい」という気持ちを打ち明けられたとしたら、それは「死にたいぐらい辛い」「この辛さから助けて欲しい」というメッセージなのです。
突然そのような気持ちを告げられたら、慌ててしまう気持ちは理解できます。しかし受け入れる気持ちを持っておかないと、本人が孤独を感じてしまいさらに自殺への思いが強くなってしまいます。
決して拒絶をするのではなく、真剣に相手の訴えに耳を傾けてください。死にたいという感情を理解するように努め、専門機関へ相談するようにしましょう。
専門機関への相談が重要
「死にたい」という気持ちを「誰にも黙っておいてほしい」と本人から相談されることがあります。
「死にたい」という感情を持っているものの、職場や学校などに迷惑をかけてはいけないという気持ちも強いからです。
自分自身で何とかできる状況ではありませんので、うつ病の適切な治療が必要であることを理解しなければなりません。
最も大事なことは専門機関に相談し、適切な治療を受けることです。
本人は精神科や心療内科への受診をためらうこともありますが、出来る限り早い時期に治療を開始する必要があるのです。
品川メンタルクリニックでうつ病・ストレスの新しい治療を
うつ病による精神症状の軽減は、品川メンタルクリニックで行っています。早めの発見・治療がより早い解決方法になるでしょう。
うつ病の症状によって「死にたい」という気持ちが強い場合であればご相談ください。
中には一般のメンタルクリニックなどで受診し抗うつ薬を開始したものの、副作用によって希死念慮が表れてしまったということも少なくありません。品川メンタルクリニックでは、薬を使わない新しい治療法「磁気刺激治療(TMS)」を採用しています。副作用の心配がなく、抗うつ薬での治療と比べ比較的短期間で効果を実感することができます。
「磁気刺激治療(TMS)」であれば、12歳以上(中学生)から治療を行うことが可能です。つらい症状で悩んでいるのであれば、ぜひ品川メンタルクリニックにご相談いただきたいと考えています。
品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。