光トポグラフィー検査をおすすめしたい7つの理由

発熱は体温計、高血圧は血圧計、ウィルス感染は抗原検査など、さまざまな身体の異常にそれぞれに対応した検査があり、それによって客観的に評価することができます。しかし、うつ病などの精神疾患ではそういった客観的な指標に乏しく、医師が症状を確認して診断することがほとんどです。
《光トポグラフィー検査》は、脳血流の変化を専用装置で測定・可視化し、うつ病などの診断の手掛かりにしようという検査です。

この記事では、光トポグラフィー検査の長所と短所を解説します。

光トポグラフィー検査とは

《光トポグラフィー検査》は安全性の高い光(近赤外光)を用いて頭部の血流量の変化を測定することで、脳の活動状態を可視化する脳の検査です。変化のパターンを波形によって《うつ病・双極性障害(躁うつ病)・統合失調症・健常》に分類し、総合的な診断に役立てようというものです。

光トポグラフィー検査単独で自動的に診断できるわけではありませんが、体温計や血圧計のような分かりやすい指標に乏しい精神疾患の見逃しを防止し、診断をより確かなものに近づけ、また、治療者(医師や医療スタッフ)と患者様間で、情報を共有しやすくするなど、広く役立つ検査です。

光トポグラフィー検査をおすすめする7つの理由

光トポグラフィー検査には次のような長所があります。

  • 安全性が非常に高い
  • 楽な姿勢で受けられる
  • 疾患の見逃しを防止する
  • 診断をより確かなものに近づける
  • 時間分解能が高い
  • 検査時間が短い
  • 情報共有をしやすくする

それぞれについて以下で説明します。

1.安全性が非常に高い

光トポグラフィー検査は、身体に害のない光(近赤外光)を使って測定するため、人体を傷つけません。幼児でも受けられるほど安全性が高く、繰り返し測定しても人体に有害な影響が生じません。健康な人が使用しても特に害はありません。

2.楽な姿勢で受けられる

光トポグラフィー検査は、立った状態や座った状態でも検査可能です。身体を拘束、あるいは固定する必要もありません。楽な姿勢で受けられるため検査のストレスも小さく、日常生活に近い状態の脳の状態を見ることができます。

3.疾患の見逃しを防止する

例えば、《双極性障害》は《躁状態・軽躁状態》と《抑うつ状態》を繰り返す精神疾患ですが、テンションの高い躁状態・軽躁状態を「調子がいい」時期だと誤認する発症者が多く、「調子がいい」のでその期間は医療機関を受診しないし、その期間の状態を申告することもない、ということになりがちです。
実際、インターネット上で行われたアンケート調査によると、双極性障害の診断を受けるまでには平均4年かかっています。診断に時間がかかった理由の上位3項目(複数回答あり)は、「躁状態を病気と思わず、医師に伝えなかった」(39%)、「双極性障害を知らなかった」(38%)、「医師とのコミュニケーション不足」(25%)ということでした[1]
光トポグラフィー検査の結果により、患者本人が気付いていなかった可能性に気付くことで、問診の精度が向上し、隠れた疾患を認識できる可能性が高まります。

4.診断をより確かなものに近づける

光トポグラフィー検査は、6~8割の精度でうつ病・双極性障害・統合失調症・健常を判別する結果が出ています。この検査単独で診断はできませんが、問診内容を強化する客観情報として有用です。

5.時間分解能が高い

《時間分解能》とは、時間の変化を識別する能力のことです。時間分解能が低い場合、複数の信号が短時間で発せられた場合に、それぞれを区別できずに1つの信号として検知してしまうことになります。例えば、「時間分解能が1分」「音を検出する」測定器が、「時計の秒針のカチコチという音を検出する」場合、1分間の秒針の音が、60回ではなく、まとめて1回と認識されることになります。
光トポグラフィー検査の時間分解能は0.1秒です。光トポグラフィー検査では、脳の活動状態を時間経過(0.1秒ごと)に沿って細かく測定可能です。

6.検査時間が短い

装置の着脱時間を含め、検査時間は15分程度です。

7.情報共有をしやすくする

検査結果をグラフとして出力できるので、結果が視覚的で直感的に分かりやすく、他者との情報共有も簡単です。

光トポグラフィー検査の限界

光トポグラフィー検査にも短所はあります。
以下は光トポグラフィー検査の限界です。

脳の表層しか測定できない

測定できるのは脳の表層数センチのみで、脳深部の様子は測定できません。

脳血流以外の影響も受ける

脳と測定機器の間には頭皮・筋肉や頭蓋骨が存在しているため、これらが測定ノイズとなります。特に頭皮の血流の影響は大きいといわれていますが、「脳に由来するデータと脳以外に由来するデータの変動は類似している[2]ことが分かっており、これは両者が共通して自律神経系の制御を受けているためだと考えられています。

どんな人におすすめですか?

光トポグラフィー検査は、次のような方に特におすすめです。

  • うつ病の治療をしているが、効果が実感できない方
  • 自分の状態について、指標的な納得感がほしい方
  • 家族に説明するために、説明しやすい図表などがほしい方
  • セカンドオピニオンとして検査を希望する方
  • 気分の落ち込みなど、うつ症状を抱えている方

上記以外の方でも検査可能ですので、ご予約の上、ご相談ください。

まとめ

《光トポグラフィー検査》は、脳血流の変化を測定・可視化し、うつ病などの診断に客観的な視点を加える検査です。体温計や血圧計のような分かりやすい指標に乏しい精神疾患の見逃しを防止し、診断をより確かなものに近づけるなど、広く役立つ検査です。
具体的には以下のような長所があります。

  • 安全性が非常に高い
  • 楽な姿勢で受けられる
  • 疾患の見逃しを防止する
  • 診断をより確かなものに近づける
  • 時間分解能が高い
  • 検査時間が短い
  • 情報共有をしやすくする

一方で、「脳の表層しか測定できない」「脳血流以外の影響も受ける」という短所もあります。
光トポグラフィー検査は、「うつ病の治療をしているが、効果が実感できない方」「自分の状態について、指標的な納得感がほしい方」「家族に説明するために、説明しやすい図表などがほしい方」などに特におすすめできますが、いずれにも該当しない方も検査可能ですのでご相談ください。

渡邊 真也

監修

渡邊 真也(わたなべ しんや)

2008年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニックの統括院長・本院院長兼務。精神保健指定医。

品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

関連する記事

  • 更新

精神科・心療内科情報トップへ