HSPとは? チェックリストや向き合い方を解説

HSPとは、Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の略で、人一倍繊細な気質をもって生まれた人という意味です。
こうした気質を持つ人は職場や家庭など生活の中で気疲れしやすく、生きづらいと感じているタイプの方が多いのです。
HSPとは? チェックリストや向き合い方を解説
HSPとは? チェックリストや向き合い方を解説

人の言動に動揺しやすかったり、人の感情に自分の気持ちも左右されてしまったり、周囲の音、光、匂いなどが気になって仕方なかったり。あなたは今、そんな毎日を過ごしながら世の中を「生きにくい」「疲れる」「つらい」と感じているかもしれません。

職場や学校、組織に属するのが息苦しく、自分を変えなければと悩んでいる方もいるでしょう。ですが、それは生まれ持った性質「HSP(エイチエスピー)」かも。HSPとうつ病の違い、セルフチェック、HSPとうつ病の関連性などについて紹介しています。
HSPを知ることによってメンタル的に少しは楽になれますので、ぜひ読み進めてみてください。

また、品川メンタルクリニックはストレス・うつ病の専門クリニックです。HSPはうつ病になりやすいと言われています。HSPによって日常生活に影響が出るほど抑うつ状態が続くようであれば、いつでも気軽にご相談ください。

「HSP相談」について詳しくはこちら

HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)とは?

HSPは生きづらい? HSPの人が抱える悩み

みなさんは「HSP」とは何か、ご存じでしょうか?

英語では、Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)といい、「ひといちばい繊細な人」という意味で、この頭文字を取ってHSP(エイチエスピー)と言います。これは90年代のはじめ、繊細な人についてのHSP研究の第一人者である心理学者のエレイン・アーロン(ElaineAron)博士によって付けられた「人の気質」を表す名称です。

アーロン博士によると、人口の約20%の割合、つまり5人に1人の人はHSPだといいます。また、人に限らずコバエ、鳥、魚、イヌ、ネコ、馬、霊長類など、100種類以上の動物に同じ気質が見られることから、「繊細さ」は生きとし生けるものすべての生存本能「生き残るための戦略のひとつ」であると考えられています。

ですが、こうした気質を持つ人は職場や家庭など生活の中で気疲れしやすく、生きづらいと感じているタイプの方が多いのです。仕事や日常生活で起こるちょっとした不安感もネガティブ思考のHSP気質により深刻にとらえて考えすぎてしまう傾向にあります。HSPの女性よりもHSPの男性の方がつらいと言われています。

HSPの特徴や気質のチェックリスト

HSPの方は、周囲の状況にとても敏感です。

アーロン博士によると、HSPには「DOES(ダズ)」と名付けた4つの特性があるといいます。

Depth of processing】
考え方が複雑で、深く考えてから行動する

  • 一を聞いて、十のことを想像し、考えられる能力がある
  • 調べ物をはじめると深く掘り下げ、その知識の広さを周りに驚かれる
  • お世辞や嘲笑をすぐに見抜いてしまう
  • 物事を始めるまでにあれこれ考え、時間がかかる
  • その場限りの快楽よりも、生き方や哲学的なものごとに興味があり、浅い人間や話が嫌い

Overstimulation】
刺激に敏感で疲れやすい

  • 人混みや大きな音、騒音が苦手
  • 友達との時間は楽しいものの、気疲れしやすく帰宅すると、どっと疲労している
  • 映画や音楽、テレビ番組、本などの芸術作品に感動して泣く
  • 人の些細な言葉に傷つき、いつまでも忘れられない
  • 些細なことに過剰なほど驚いてしまう

Empathy and emotional responsiveness】
人の気持ちに振り回されやすく、共感しやすい

  • 人が怒られていると自分のことのように感じ、傷ついたり、お腹が痛くなったりする
  • 悲しい映画や本などの登場人物に感情移入し、号泣する
  • 人のちょっとした仕草、目線、声音などに敏感で、機嫌や思っていることがわかる
  • 言葉を話せない幼児や動物の気持ちも察することができる

Sensitivity to subtleties】
あらゆる感覚がするどい

  • 冷蔵庫の機械音や時計の音が気になってしまうほど聴覚が敏感である
  • 強い光や日光のまぶしさなどが苦手
  • 近くにいる人の口臭やタバコの臭いで気分が悪くなる
  • カフェインや添加物に敏感に反応してしまう
  • 肌着のタグなどチクチクする素材が我慢できないほど気になる
  • 第六感がはたらき、よく当たる

この他、絶対的に一人の時間が必要な人、緊張しやすい人、子供のころ親や先生に「繊細」「人見知り」と評価されやすかった人もHSPの可能性が高いといえるでしょう。

しかしながら、アーロン博士は4つのうち1つでも当てはまらない人はHSPではない、と定義しています。例えば、4つのうち3つに当てはまっていたとしても、1つはあまり当てはまらないと感じるなら、あなたは「HSP=人一倍繊細な人」ではなく、性格的に「内向的な人」の可能性が高くなります。

HSPとうつ病の違い

HSPとうつ病の大きな違いは、HSPは「気質」であり、うつ病は「病気」であるということです。
HSPは生まれながらに持っている感受性や気分の傾向を表し、先天的なものをいいます。
一方うつ病は、主に人間関係などの環境の変化などによるストレスから発症する病気で、後天的なものをいいます。
例えば、発症に伴って、考え方や性格、思考が大きく変わるなどの変化がみられることがうつ病の特徴です。
HSPではそのような変化はみられません。

HSPは仕事でうつ病になりやすい

HSPの人は、以下の理由からうつ病になりやすい傾向があります。

  • 自己肯定感が低い
  • 他人に共感しやすい
  • 疲れやすい

特に仕事では、さまざまな年代や職種の人と交流する機会が増えるため、同僚や先輩、上司や取引先など、人一倍気をつかうので、うつ病には注意が必要です。
うつ病は早期発見が早期回復につながります。一般的にうつ病が深刻化すると、もとの元気な状態に戻るまでに時間がかかるといわれています。HSP自体は病気ではないので、治すことはできませんが、うつ病を改善させることで、HSPと上手に付き合えるようになります。仕事でストレスを感じやすい方ほど、まずは自分がHSPかうつ病かを正しく知る必要があります。

HSPとうつ病の自己診断テスト
(セルフチェック)

似たような症状が表れるHSPとうつ病。
下記のチェック表で、スマホやPCから簡単にご自身の状態を調べてみましょう。
セルフチェックを通して、HSPなのかきちんと把握することも大切です。

ご自身を振り返って次のような状態がみられるか、
「はい」か「いいえ」でお答えください。

「日本版HSP尺度(HSPS-J19)は、何個以上だとHSPという線引きはなく、項目に当てはまるのがHSPという目安のチェックリストです。

  1. 大きな音や雑然とした光景など強い刺激が不快で、わずらわしいと感じる

  2. 忙しい日々が続くと、暗い部屋やベッドなどのプライバシーを守れる場所に逃げ込みたくなる

  3. 他人の気分に左右される

  4. 短時間にしなければならないことが多いと、気が動転してしまう(オロオロするなど)

  5. 生活や環境に変化があると混乱する

  6. 子供のころ、親や教師から「内気だ」や「敏感だ」と見られていた

  7. 音楽や美術、芸術に深く感動する

  8. 繊細な香りや味、音や音楽が好き

  9. 一度にたくさんのことを頼まれるとイライラする

  10. ビクッとしやすい

  11. 最近、睡眠不足や睡眠過多である

  12. 一日中憂鬱な気分が続く

  13. 元々、興味のあった事に興味を持てなくなってきた

  14. 自殺を考えてしまうことがある

HSPではないでしょう

「いいえ」が全ての回答の方は、HSPではないようです。

HSPと思われます

「はい」を多く選んだ方は、HSPが強い傾向にあります。
HSPは病気ではありませんので、自分の個性として上手に付き合っていきましょう。
もし、HSPでストレスを抱えることが多くなったら、うつ病を発症する確率が高いことを知っておきましょう。

HSPの可能性は低く、ストレスによるうつ病の可能性があります

Q11~14において、「はい」を多く選んだ方は、うつ病を発症している可能性があります。
うつ病を発症してしまうと、ご自身で改善することは難しいので、一度心療内科や精神科を受診することをお勧めします。

HSPによるストレスが溜まっているようです

Q1~10において、「はい」を多く選んだ方は、HSPが強い傾向にあります。
さらにHSPによるストレスが溜まっているようです。
一人で我慢しないで、身近なご家族や信頼のできる人に相談してみましょう。
ストレスが溜まり続けると、うつ病を発症してしまいますので、なるべくストレスを溜めないようにHSPと上手に付き合っていきましょう。

HSPによるうつ病の可能性があります

Q1~10において、「はい」を多く選んだ方は、HSPが強い傾向にあります。
精神的に辛い状況かと思いますので、1人で抱え込まず、お早めに心療内科や精神科に相談しましょう。
うつ病を発症してしまうと、ご自身で改善することは難しいので、医師に相談した上で治療を検討することをお勧めします。

HSPによるうつ病の可能性が高く、受診をお勧めします

Q1~10において、「はい」を多く選んだ方は、HSPが強い傾向にあります。
HSPによるうつ病の可能性が高く、すぐに心療内科や精神科に相談することをお勧めします。
とても精神的にも肉体的には辛い状況かと思いますが、うつ病が改善すれば、今の辛い状態は必ず改善しますので、医師に相談した上で治療を検討することをお勧めします。

HSPによるストレスが溜まっていたり、うつ症状がみられたりする場合は、
お早めに心療内科や精神科を受診されることをお勧めします。

HSPによるストレスが溜まっていたり、うつ症状がみられたりする場合は、お早めに心療内科や精神科を受診されることをお勧めします。品川メンタルクリニックでは、HSP気質でお悩みの方へ心理検査や心理面接、医師の診察を行い、うつ症状などがないかを確認し、お話をお聞きしながら、生活しやすくするための最適な提案をいたします。

うつ病によく見られる、「眠れない」「疲れやすい」「気分が落ちこむ」「自信が持てない」などの特徴がHSPにも見られるためです。 大きく違うのは、それらの特徴に合わせてうつ病は「自殺願望」が加わること。
また、以前は違ったのに物事の感じ方が変わり、落ち込みやすくなったという人はうつ病の可能性があります。HSPは生まれつきの気質なので“以前”が存在しません。
HSPは気質なので、「HSPを治す」ことは不可能です。
HSPであれば、自分の気質とゆっくり向き合い、うつ病であれば医師の指示のもと正しく治療していきながら、ご自身についての理解を深めていきましょう。

HSPへの向き合い方

HSPという名前だけを聞くと何かの病気と思われがちですが、これは病名ではありません。だからHSPの治療法はありません。

HSPの繊細さや敏感さは生まれ持った「気質」です。気質とは、その人が生まれながらに持っている感受性や気分の傾向などを指す心の特徴で、環境などに影響される性格と違って後天的に変えることはできません。

HSPの上手な生き方
~職業を通じて克服できる!?~

HSPの気質をうまく生かせれば、優れた能力を発揮できます。
例えば、共感力が高いので気配り上手であり多くの人から好意を得られたり、想像力が豊かなので芸術家(音楽家、作家、ライターなど)として活躍したりなど、HSPが自分の強みになります。
HSPだから自分にしかできない能力を生活や仕事に生かすことで、今の自分を好きになれるでしょう。
また、その能力を通じて、自分に合う人が周りに集まるようになり、生きやすい環境が整っていきます。

HSPはカウンセラーや
心療内科・精神科に相談

発達障害やうつ病、アスペルガー症候群(ASD)ともまったく違います。しかし、どこか似たような特徴が現れるため、誤解もされやすいのが現状です。

HSPについて相談したい場合は、まずはカウンセラーや心療内科・精神科などに相談してみるのもよいでしょう。
カウンセラーは相談がメインですが、心療内科や精神科でしたら、HSPの相談はもちろん、HSPに関連する他の病気についても診察してもらえます。品川メンタルクリニックでは、HSP気質でお悩みの方へ心理検査や心理面接、医師の診察を行い、うつ症状などがないかを確認し、お話をお聞きしながら、生活しやすくするための最適な提案をいたします。

「HSP相談」について詳しくはこちら

HSPのよくある質問

HSPは治療できますか?
HSPは気質ですから根本的な治療というのはありません。
HSPが元で日常生活でとても困っているようでしたら精神科医に相談してみてはいかがでしょうか、カウンセリングや認知療法などで日常生活の改善ができるかもしれません。
HSPを治す薬はありますか?
残念ながらありません。HSPは気質ですから治す薬はありません。HSPが原因でうつ病などの症状があればその症状を治療する薬を使う場合もあるかもしれませんがHSPそのものの治療薬はありません。
周囲の人にHSPであることを伝えたほうがいいですか?
HSPのことで悩んでいたり、HSPのことで相談に乗って欲しいなど、伝えたい理由は色々あると思います。
ただHSPを十分に理解していない人に伝えても病気と間違えられたり誤解されたりするかもしれませんので、まずはHSPの特徴をよく知ってもらってから伝えるようにすればより理解が深まると思います。
家族や恋人がHSPのとき、どのように接するのがいいですか?
HSPの特徴に理解を示しサポートしてあげてください。HSPだからと過度な配慮などはせず気質を理解した上で普通に接することが大切です。

HSPの豆知識

幅広い層に見られるHSP

日本人は国民性から、HSPの割合が海外の人より比較的高いと言われています。
HSPは有名人や芸能人から一般人まで幅広い層に見られます。
HSPは遺伝的なものであり、幼少期から大人になってからも一生付き合っていかなくてはならない気質です。

HSPの種類

HSPには内向型HSP『HSP』、外向型HSP『HSE』、刺激追求型HSP『HSS型HSP』、刺激追求型・外向型HSP『HSS型HSE』4つの種類があると言われています。
種類によっては異なる症状が出るため、自分がどの種類のHSPにあたるかを把握した上で改善するのが望ましいです。

HSPの長所

対人関係の洞察能力が非常に高いので相手の気持ちの変化にすぐ気づくことができ相手の立場に立って行動できたり、細かな環境変化にも気づきやすく変化に対応する力が高いとされています。
感受性の高さから芸術に対しても理解が深く、映画や演劇や美術展など人一倍楽しめる特徴があります。
仕事の面で言えば、周囲をよく見ているので組織に役立つ行動をする事がうまく、見落としがちな些細な事に気付いてミスを防いだり業務の改善出来る能力に優れているとされています。

HSPの人にとって相性の良い仕事

HSPの長所が活かせる仕事として、デザイナー、ゲームクリエーター、プログラマー、セラピスト、 WEB マーケターなど比較的一人で仕事が完結できるものが良いでしょう。感性や察知能力が高いのでクリエイティブな仕事で細かいところにも気づいたり配慮したりできるので HSPの方に向いていると思います。
また配送ドライバーなどは一人で作業が行えるため人間関係で悩むことが少なく変わったことや危険を察知する能力が高いため、HSPの特徴を活かせる仕事ではないでしょうか。

HSPの人にとって相性の悪い仕事

HSPと相性が悪い仕事としては突発的なことに対応しなければならない接客業などコミュニケーションが多い仕事が挙げられます。ただHSPは気配りができて空気を察する能力が高い特徴なのでコミュニケーションが苦にならなければ非常に気の利いた接客が評価されると思います。
また残業が多く上下関係の厳しい体育会系企業などは感性が高い特徴のHSPの人には気疲れして居心地の悪さを感じてしまうかもしれません。

HSPの対処法や疲れないコツ

人一倍、感性が強くて空気を読める性格なので本人が思っている以上に疲れていることがあると思います。
そういったときはリフレッシュすることが大切です。職場や学校でリラックスできる場所や時間帯を意識して持つようにしましょう。
HSPでは相手の反応を考えすぎて思っていたことを言えずにモヤモヤが溜まってしまうこともあるかと思いますので、なんでも話せる理解者を作っておくことも大切かと思います。
また苦手な人に対しては近づかないことが大切です。

自他ともにHSPを理解する必要がある

HSPであることに罪の意識をもってはいけません。HSP気質により、「無気力」、「マルチタスクができない」、「ミスが多い」、「すぐ泣く」、「優柔不断」、「回りの人と目を合わせない」、「体調不良」などの症状が出ることがあります。 しかし、それはHSP気質の人が故意にやっている訳ではありません。このような症状が出る事ことで本人も強いストレスを感じ、「耳鳴り」、「眠れない」、「1人になりたい」、「トラウマになる」、「寂しい」などで大変な思いをしているのです。 周りの人に理解してもらえず、悪口を言われる状況は、本人にとって非常に厳しいものがあります。

非HSPの方にとっては「カフェインだけ、空腹だけでなんでそこまで敏感になるの?」と考えるかもしれませんが、HSP気質の方は直感的に反応する傾向が非常に強いのです。周りの人は、そのような特性を理解することが理想でしょう。 HSPの方もポジティブにとらえると、「絵など芸術的なセンスがある」、「記憶力がいい」など、メリットもたくさんあります。過度に自己否定をする必要はありません。 「もう無理だ」、「めんどくさい」と諦めずに、自他ともにHSPを理解する努力をしましょう。

ストレス発散を忘れずに

ストレスをためすぎると、うつになる可能性があります。下記のように自分にできる取り組みをぜひ行ってみてください。

  • 音楽など音が気になる場合はノイズキャンセリング機能があるイヤホンを使用するか、耳栓で音を抑える。
  • マインドフルネスを取り入れ、心を穏やかにする。
  • あえて何もしないリラックスできる休み方を取る。
  • 運動をしたり、信頼できる人に悩みを打ち明けたりなど、ストレスを発散させる。

自分で発散することが難しい場合は専門家によるカウンセリングがお勧めです。

参考:

渡邊 真也

監修

渡邊 真也(わたなべ しんや)

2008年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニック院長。精神保健指定医。

品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

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