ジェイゾロフト
(セルトラリン)
ジェイゾロフトの主な特徴
“薬物相互作用、中断症候群
共に少なく、使いやすい”
※南江堂「今日の治療薬2018年」参照
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に分類され、脳内の神経伝達を改善し、憂うつな気分を和らげ、意欲などを改善する薬です。
ジェイゾロフトについて、薬の効果や副作用、服用時の注意点、セルトラリンがジェイゾロフトのジェネリックであることなど、詳しく説明しています。
ジェイゾロフト(英語:jzoloft)はどんな薬?
ジェイゾロフトの効果と副作用
SSRIに分類され、セロトニンの働きを高める作用のある薬です。具体的な作用機序は、神経伝達物質を調整することで脳内のバランスを整え、辛い症状を改善していくと考えられています。うつ病、うつ状態、外傷後ストレス障害(PTSD)、パニック障害などに効果がある薬です。
他にも、強迫性障害や摂食障害(過食症・拒食症)、社交不安障害(社会不安障害)(SAD)などに抗不安作用として用いられることもあります。
セロトニンの働きを高める作用のある薬で、不安感や落ち込み、やる気が出ない(意欲の低下・無気力・何もしたくない)、眠れないなどといった精神状態の改善に効果が期待できます。SSRIの中では、パキシルの方が「強さ」や「キレ」だけみると強いのですが、ジェイゾロフト(先発品)は副作用が他のSSRIや抗うつ薬と比較すると軽めで少ない傾向があります。うつ状態だけではなく、不安の病気にも使われます。2015年12月より、ジェネリック医薬品(後発品)も発売となり、成分名のセルトラリン錠として発売されています。
うつ状態の方は、気分の落ち込みや不安が強く出る傾向があり、副作用もマイルドで離脱症状が出にくいことから、初めに使う薬としては使いやすい抗うつ薬になります。気分の安定化に効果が期待でき、月経前気分不快障害(PMDD)や、月経前緊張症(PMS)にも効果があり、女性との相性もよい抗うつ薬といわれています。
ジェイゾロフトの種類
ジェイゾロフトには通常のジェイゾロフト錠とジェイゾロフトのOD錠(水なしで飲めるタイプ)があり、それぞれ効果に違いはありません。さらに、副作用が比較的少なく飲み続けやすい点が特徴です。同様にジェネリック医薬品もあります。
ジェイゾロフトの服用について
ジェイゾロフトは毎日飲み続けることで少しずつ効果が期待できる薬です。
ジェイゾロフトの血液中濃度半減期(約23~24時間)が長いので、1日1回服用なのも利点です。
ただし、飲み始めてすぐに効くわけではないので、効果の実感(効き目・効き始め)はおおよそ2週間~1ヶ月ほどかかることが多いです。
一般的には朝食後もしくは、夕食後に服用とされますが、添付文書にもいつ飲むという記載はありません。空腹時でも影響が少ない薬なので、毎日同じ時間に飲めば、服用のタイミングを変更することも可能です。専門機関の医師にご相談のうえ、指示に従ってください。また、飲み忘れた場合は同日内の次の服用時間に服薬しましょう。ただし、2回分を一度に飲まないでください。気付いたときにできるだけ早く1回分を飲んでください。
ジェイゾロフトを服薬開始して、数週間ごとに効果判定を行います。
開始用量は1日25mgで、最大量が1日100mgとなります。効果が不十分な場合は、25mg~50mg/日ずつ増量をしていきます。最大量の100mgまで使っても効果が不十分な場合は、他の抗うつ薬の追加もしくは変更、増強療法として抗精神病薬や気分安定薬、薬物療法のアプローチの変更(診断の見直し)などの処置がとられます。自己判断での減薬・断薬は決してせず、主治医へ相談しましょう。
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<メリット>
・効果と副作用のバランスが良い
・OD錠(水なしで飲めるタイプ)が販売されている
・ジェネリックが販売されている
・離脱症状*が比較的少ない
*抗うつ剤の血中濃度が急激に下がったことに体が対応しきれない結果を言います。体は急激な変化に弱いといわれます。 -
<デメリット>
・胃腸障害が多い ※胃薬も一緒に処方される場合もあります。
・男性では性機能障害が多い
・睡眠障害(不眠・傾眠)が起きやすい
SSRIで他の薬は
どんな薬があるの?
ジェイゾロフトの基本情報
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【薬効分類】
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
脳内の神経伝達物質を改善し、憂うつな気分を和らげ、意欲などを改善する薬 -
【有効成分(一般名)】
塩酸セルトラリン
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【錠剤の形状】
ジェイゾロフト錠
ジェイゾロフトOD錠(水なしで飲めるタイプ)
ジェネリック医薬品:セルトラリン錠 -
【効能・効果】
・うつ病、うつ状態
・パニック障害
・外傷後ストレス障害 -
【主な用法・用量】
開始用量は成人で25mgを1回1錠から始まり、夕食後に服用することが多い。
最高用量が1日100mg(1回4錠)になり、効果によって服用量が変更されます。
また、ジェネリック医薬品のセルトラリン錠も1日25mgを初期用量とし、1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により1日100mgを超えない範囲で増やしたり減らしたりする。 -
【禁忌・原則禁忌】
病気や症状に応じた注意事項
- ・過敏症(過去にジェイゾロフト錠、ジェイゾロフト OD 錠に含まれる成分で過敏な反応を経験したことがある人)
- ・ピモジド、モノアミン酸化酵素〈MAO〉阻害剤投与中あるいは投与中止後14日間以内(セロトニン症候群の恐れ)
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【飲み合わせ(併用注意)】
- ・セロトニン症候群を引き起こすおそれがある薬
パーキンソン病治療薬のセレギリン(エフピー)はジェイゾロフトと併用すると、両方の作用がかぶり、重い副作用を起こします。 - ・重い不整脈を引き起こす薬
安定剤のピモジド(オーラップ)との併用により、重い不整脈を起こす可能性があります。
他にも、リーマス(炭酸リチウム)・出血傾向が増強する薬剤、アスピリン等の非ステロイド系抗炎症剤、セイヨウオトギリソウ( セント・ジョーンズ・ワート)を含む健康食品など、飲み合わせや併用薬に注意する薬はたくさんあります。必ず現在と最近まで飲んでいた薬を医師に伝えてください。
- ・セロトニン症候群を引き起こすおそれがある薬
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【主な副作用】
セロトニン症候群※1、重篤な肝障害(肝機能障害)※2、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)※3、低ナトリウム血症、血糖異常、血小板数減少、血圧低下、悪性症候群※4、運動障害、歯ぎしり、アカシジア、QT延長、悪心・嘔吐、傾眠、口渇(口が渇く)、腹痛、あくび、耳閉感、頭痛、痙攣、総コレステロール増加、ほてり、ふらつき(起立性低血圧)、息苦しさ、浮動性めまい、味覚障害、抗コリン作用、尿閉(尿が出にくい)、頻尿、睡眠障害、昏睡、不眠、寝汗、多汗、錯乱状態、下痢・軟便、発汗、発熱、発疹など
※1 落ち着かない、不安、興奮・混乱、不眠、体の震え・ぴくつき、めまい、発熱、発汗、頻脈、下痢、血圧上昇。
※2 肝臓の重い症状:だるい(倦怠感)、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
※3 だるい、のどが渇く、頭痛、吐き気、けいれん、意識もうろう、気を失う、重い皮膚・粘膜障害・発疹、発赤、水ぶくれ、うみ、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。
※4 無動緘黙・強度の筋強剛・嚥下困難・頻脈・血圧の変動・発汗等が発現し、それに引き続き発熱がみられる。 -
【薬価】※2018年4月時点
ジェイゾロフト錠 ・25mg錠:85.3円
・50mg錠:147円
・100mg錠:255.2円ジェイゾロフトOD錠 ・25mgOD錠:85.3円
・50mgOD錠:147円
・100mgOD錠:255.2円※ジェネリック医薬品あり
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【注意事項】
- ・眠くなったり、めまいがしたりすることがありますので、車の運転などの危険を伴う機械を操作する際には十分注意してください。
- ・この薬は、使用を中止した場合に、不安になる、いらいらする、あせる、興奮しやすい、めまい、感覚の異常、頭痛、吐き気などの症状があらわれることがあるので、医師の指示どおりに服薬してください。
- ・妊婦又は妊娠している可能性のある婦人では、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。(妊娠中の投与に関する安全性は確率していない)
- ・授乳中の婦人への投与は避けることが望ましいが、やむを得ず投与する場合には授乳を避けさせること。
- ・子供への処方は最後の選択肢とし、優先すべきは心理社会的支援や環境調整です。
- ・海外で実施された6~17歳の大うつ病性障害患者を対象としたプラセボ対照臨床試験において有効性が確認できなかったとの報告がある。本剤を18歳未満の大うつ病性障害患者に投与する際には適応を慎重に検討すること。
- ・抗うつ薬の服用により、24歳以下の患者で、自殺念慮、自殺企図のリスクが増加するとの報告があるため、本剤の服用にあたっては、リスクとベネフィットを考慮すること。
- ・因果関係は明らかではありませんが、病状の悪化、死にたいという気持ちになる、他人を傷つけるなどが報告されていますので、このような兆候に気がついた場合には服用を止めないで、医師または薬剤師に相談してください。
- ・不安、焦燥、興奮、パニック発作、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、アカシジア/精神運動不穏、軽躁、躁病等があらわれることが報告されています。また、因果関係は明らかではないが、これらの症状・行動を来した症例において、基礎疾患の悪化又は希死念慮、自殺企図、他害行為が報告されています。患者の状態及び病態の変化を注意深く観察するとともに、これらの症状の増悪が観察された場合には、服薬量を増量せず、徐々に減量し、中止するなど適切な処置を行います。
- ・脳の器質的障害または統合失調症の素因、衝動性の高い依存症、てんかんなどのけいれん性疾患またはその既往、QT延長またはその既往、除脈、低カリウム血症、出血傾向または出血性素因、緑内障または既往がある方は、必ず医師と薬剤にお伝えください。
- ・緑内障又はその既往歴のある患者[眼圧上昇を起こし、症状が悪化するおそれがあります。]
- ・L-トリプトファン含有製剤、L-トリプトファンを含有するアミノ酸製剤、L-トリプトファンを含有する経腸成分栄養剤は、セロトニン作用が増強する相互作用がある。
- ・ジェイゾロフトの主代謝物はN-デスメチルセルトラリンであり、この他にも数種の代謝物が存在します。なお、代謝にはCYP2C19、CYP2C9、CYP2B6及びCYP3A4など少なくとも4種の肝薬物代謝酵素が関与しており、多代謝経路を示します。
- ・低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は国内で確立していません。(使用経験がありません)。
- ・本剤は、主として肝臓で代謝されるが、高齢者では肝機能が低下していることが多いため、高い血中濃度が持続し、出血傾向の増強等がおこるおそれがあります。高齢者においては、肝機能、腎機能の低下を考慮し、用量等に注意して慎重に投与します。
- ・PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導します。(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されています。)
- ・本剤は分布容積が大きいので、強制利尿、透析、血液灌流及び交換輸血はあまり効果的ではありません。
※各製薬会社(薬品メーカー)から医療用医薬品の添付文書が公開されていますので、詳細を知りたい方はこちらをご利用ください。また、薬が処方される際に薬について記載されている説明書を服用する前に必ず読むようにしましょう。
ジェイゾロフトについてのQ&A
- ジェイゾロフトが効かないのですが、くすりが合わないのでしょうか?
- ジェイゾロフトは比較的副作用が少ない薬とされていますが、副作用が出ない人もいれば、強く出る人もいます。同様に、効果を実感できる人とできない人もいます。その場合は、精神科・心療内科の医師の指示により、薬の変更や増量という処置がとられます。決して自己判断でやめたい場合の断薬や減らしたい場合の減薬はしないようにしましょう。
- ジェイゾロフトを服用中、アルコールのお酒は飲めますか?
- 原則、アルコールと薬は併用しないことが大前提です。飲酒は他の抗うつ薬で作用の増強が報告されています。
- ジェイゾロフトを服用したら、痩せますか?それとも、太りますか?
- 他の抗うつ薬と比較してもヒスタミン受容体への親和性が低いため食欲が亢進することはあまりありません。 食欲や代謝などは様々な影響があり、薬だけではなく、その時の病状により体重増加、体重減少が関係してきます。 SSRIは吐き気、嘔吐、下痢など胃腸症状が出やすいのでむしろ投与開始直後は痩せることがあります。
- ジェイゾロフトを服用するとEDになるってホントですか?
- ジェイゾロフトは、男性の性欲低下・勃起不全・射精障害・オーガニズム低下がみられることが多いです。
特に性欲・欲望、性的興奮、絶頂といった反応が起こらなくなり、悩まれている方が 多いです。パートナーの関係性にも影響するため、軽視できない副作用です。
ご状態によって、減量したり、NaSSA( レメロンやリフレックス)など性機能障害を起こしづらい薬に変更するなど、医師に相談のうえ他の薬に変更・追加したりします。 - ジェイゾロフトを服用したら不眠になりますか?
- ジェイゾロフトはセロトニンを増やして気持ちを前向きにしてくれることと同時に、脳を覚醒させる作用もあります。5HT(セロトニン)2A受容体を刺激するためと考えられています。5HT(セロトニン)2A受容体が刺激されると、良い働きの他に、脳の覚醒レベルを上げるため、不眠を起こしやすくすることもあります。様子をみて、気になる様であれば、医師に必ず相談のうえ、対処していきましょう。
- ジェイゾロフトは離脱症状が起きますか?
- 他のSSRIと比べて比較的離脱症状が起きにくいとされていますが、離脱症状に苦しむ方もしばしばいらっしゃいます。
離脱症状といえる具体的な症状としては、シャンビリといい、耳鳴り・震え・めまい・吐き気・ソワソワ感・しびれ(電気が走るような感じ)が生じる場合があります。
急に飲むことをやめることや飲み忘れてしまったとき、急に減らしてしまったときに起こりやすいといわれます。抗うつ薬は基本、体に慣らしながら飲む薬なので、急激な濃度変化が離脱症状を引き起こします。離脱症状を少しでも緩和するために、100mg→75mg→50mg→25mgと少しずつ減らしていく方法が多いです。場合によっては、抗不安薬(精神安定剤)を必要に応じて頓服や併用を取入れます。また、離脱症状を引き起こす原因のほとんどが自己判断による中断です。必ず医師に相談し、減薬などの対処法をとりましょう。
品川メンタルクリニックでは、うつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
抗うつ薬でご不安な方は、ぜひお気軽にご相談ください。