大人のADHD(注意欠如・多動症)とは?特徴や症状
ADHDとはどんな病気?
ADHDとは「注意欠如・多動症」と呼ばれる『発達障害』のなかのひとつに分類されるものです。発達障害には他にも自閉スペクトラム症(ASD)や限局性学習症(LD)がありますが、それら併せ持っているタイプもあります。
脳の機能障害によって、物をよく失くしたり、人との約束を忘れてしまったり、落ち着いて行動できなかったり、身体を揺らしたままじっとできなかったりといった特徴が現れます。
生まれてすぐに発症することも
ADHDは、アメリカ精神医学会の「DSM-5」(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)には、12歳以前に症状が現れるものであると示されています。子供には20人に1人の割合で、成人には40人に1人の割合で生じていることが分かっています。
ADHDは脳の機能障害によって引き起こされる障害で、生まれてすぐに発症する場合もあります。
ただし、言語や認知などが未発達の乳児では、症状がはっきりと現れることがありません。「寝付かない」「寝がえりが多い」「抱っこを嫌がる」ことがありますが成長過程で誰にでも見られることですので、それだけでは見分けることができません。
4歳までにADHDの特徴が現れ、12歳までにはほぼ明らかに出現します。トラブルの原因となる行動によって問題視されてしまい、学校生活や人間関係においては大きな影響を及ぼすこともあります。
中高生くらいになると、他人と自分自身を比べることによって、コンプレックスを強く持ってしまい、勉強の意欲がなくなり、学力の低下が著しくなるようなこともあります。
大人になってから気付くことも多い
個性や性格に近いもので、生まれつき現れる特性ですから見過ごされることも多く、物忘れや集中力において「人と自分ではなぜ違いがあるのだろう」と大人になってから症状に気づくケースも珍しくありません。
そのため仕事や人間関係などにおいて困りごとが生じていることもあり、次のような状況で悩んでいいます。
「いつも仕事においてミスしてしまう」
「集中することが苦手で、人よりも業務に時間がかかってしまう」
「仕事に必要なものなのにすぐに失くしてしまう」
「遅刻が多く、怒られてばかりいる」
「同じ作業や座り続けることができない」
「いくつかの仕事を同時に進めることができない」
「整理整頓ができず、やりっぱなしにしてしまうことも多い」
「上司や同僚にしっかりと説明されると、混乱して理解できない」
「思いついたことを発言してしまい、周りから空気が読めないと思われている」
「計画通りにできず、すぐにイライラしてしまう」
ADHDは「不注意」「多動性」「衝動性」の特性がありますので、仕事や人間関係でトラブルとなり、周りからは落ち着きがなくいい加減な人のように見られてしまうことがあります。
そのため恋愛や結婚に対しても不安を抱えてしまうこともあります。
ADHDの症状とタイプ
不注意が優位となっているタイプ
(不注意優勢型)
多動・衝動性が優位となっているタイプ
(多動性-衝動性優勢型)
両方が混合しているタイプ(混合型)
これらは子供でも大人でも、この3つのタイプに分類することができます。詳しくお伝えしていきましょう。
【不注意優勢型】
- すぐに気が散ってしまい、課題や仕事などに集中できない
- 必要なものを忘れたり、失くしたりすることが多い
- 話しかけても、うわの空で聞いているように見えない
- 部屋や机などを片付けることができず、いつも散らかっている
- 単純なミスが多く、期限内にやり遂げることが難しい
不注意優勢型は、
「周りの状況によって気が散ってしまう」
「集中し続ける忍耐力がない」
「単純なミスや忘れ物などが多い」
といった「不注意」の特徴が色濃く出るタイプです。
ただし、やりたいことや好きなことに対しては、周りに話しかけられても気付かないほど集中して取り組めるという側面も持っています。
このような場合に、周りから問いかけしても気づかないこともあるため、周りの人から「無視されている」と誤解されることも少なくありません。
そのような点があるために、「不注意」に関しては本人のやる気や怠けによるものだと誤解されてしまうことがあります。しかし決してそうではなく、脳の発達障害によって引き起こされるものなのです。
【多動性-衝動性優勢型】
- 静かに過ごすべき場所でじっとしていられない
- 落ち着いて食事や会話に集中することができない
- 思いつきで行動してしまう
- 他人のものを勝手に使って迷惑をかけてしまう
- 列に並んで待っておくという行為が苦手である
多動性-衝動性優勢型は、
「じっと座っておくことができない」
「感情をコントロールすることが苦手」
「呼ばれてもいないのに答えてしまう」
など、「多動性」および「衝動性」の特徴が色濃く出るタイプです。
「多動性」において子供の場合、授業中などにおいても椅子に座り続けることができなくて、立ち上がって歩きだしてしまうことがあります。大人の場合においてもじっとしておくことができず、身体を揺らしたまま止まれないことがあります。
特に学校や職場など社会集団のなかで過ごしている場合においては、「落ち着きがない」と捉えられてしまうことが多いです。
さらに「衝動性」は、子供が友達同士で遊んでいる場合に、自分の順番を守れずに抜かしてしまうことでトラブルになるようなことがあります。大人の場合においても「待つ」という行為が苦手であり、イライラしてしまったり衝動買いをしてしまうようなこともあります。
【多動性-【混合型】
「混合型」は上記で説明した「不注意優勢型」と「多動性-衝動性優勢型」の特徴がどちらも現れるというタイプを指しています。
「不注意優勢型」と「多動性-衝動性優勢型」の2つのタイプの現れ方の度合いについては、人によって差がありますので、すべての人が同じような特徴を持つタイプではありません。
この「混合型」においても、自分の興味があることややりたいことについては、周りの物音などに影響されない集中力を発揮するようなこともあります。
そのため好きなゲームであれば、いつまでも取り組んでいることがありますし、興味のある部活動においても特に問題なく取り組めるようなこともあります。
ADHDの大人と子供に起きる
行動・状態の違い
ADHDは子供の20人に1人で、成人の40人に1人の割合で生じることが分かっています。
脳の機能障害によって引き起こされる障害で、生まれてすぐに発症する場合もあります。12歳までに症状が明らかになりますが、成長過程で症状に気付かないことも多くあり、見逃されてしまって大人となった人が多いと考えられています。
近年では、大人のADHDも注目されるようになってきましたので、「仕事で単純なミスを繰り返す」「いつも忘れ物をしてしまう」といった状況が多くなることによって、自分自身がADHDではないかと受診するケースも増えてきたのです。
同じADHDでも大人と子供では起きる行動や状態に違いが生じます。どのような違いがあるのか詳しくお伝えしていきます。
大人に起きる行動・状態
ADHDをはじめとする発達障害の研究が進み、近年では今まで見過ごされてきた大人のADHDが注目されるようになりました。
「必要なものを忘れてしまう」
「よく物をなくしてしまう」
「単純なミスが多く、怒られてしまう」
「決められた期限内に仕事がやり遂げられない」
といった症状から自分自身がADHDではないかと疑い、受診することによって診断されることが多いのです。
大人のADHDの特徴として「不注意優勢型」が多くみられることが知られています。
発達障害であるADHDは幼少期からその症状が現れており、12歳までにはっきりと出現することが知られています。しかし「不注意優勢型」の場合、ほかの子供にもよくある行動ですから、学校生活や家庭においても問題とならないことも多いのです。
「うっかりしている」と、家族や先生、周りの友人などがサポートし、症状をうまくカバーすることによって、大きな問題とならずに乗り越えていけることもあります。
しかし、自分自身が社会人となり、自分自身の責任によって行動し働かなければならないようになると、ADHDの不注意の部分が明らかとなってしまい、困ってしまう場面が多くなります。
混合型である場合には、幼少期に落ち着きがなく多動の症状がみられることがありますが、大人になると減ってくる傾向にあります。そのため多動の部分が目立たなくなることによって、不注意の部分が明らかになることもあります。
ただ多動性-衝動性の症状として、常にそわそわしているような落ち着きのなさを感じることがあります。また衝動的に買い物をしてしまうことが増え、重要なことにおいても独断で決めてしまうようなこともあります。
子供に起きる行動と状態
ADHDは大人になってはじめて現れるというものではなく、生まれた直後から見られることもある脳の病気です。学齢期の子供においては、11%がADHDであるというデータも存在します。
子供に起きる行動や状態としては以下の3つのタイプがみられます。
- ・不注意型
- ・多動-衝動型
- ・混合型
子供に見られる主な「不注意型」は次の症状がみられて、学校や家庭において問題やトラブルとなってしまいます。
- 授業に集中することができない
- 集中しなければならない問題や課題が苦手
- 不注意によってミスをしてしまう
- こちらの話を聞いていないようにみえる
- 忘れ物や物を失くすことが多い
子供に見られる主な「多動-衝動型」は次の症状がみられます。
- 席にじっとしていられず、手足をそわそわ動かしてしまう
- じっとしなければならない場面で立ち上がって走り出す
- 順番を待つことができず、人をさしおいて抜かしてしまう
- 必要以上にしゃべりすぎて注意されてしまう
- 質問されても遮って自分の話をしてしまう
「混合型」では「不注意型」と「多動-衝動型」の割合が同じくらいに出現します。
また、これらの症状と並行して、睡眠障害であることが多いことが研究データによっても明らかになっています。
子供のADHDによる睡眠障害においてよくみられる症状は「なかなか寝つくことができない」「ぐっすりと眠れない」あるいは「眠りすぎてしまう」ということがみられます。
また、幼少期の場合でADHDの症状が分かりにくい場合においても、「夜泣きがひどい」「寝返りが多い」「抱っこを嫌がる」などといった症状がみられることがあります。
ADHDの原因
ADHDは現在も研究が進められていますが、原因については、はっきりと解明されていません。しかし、生まれたときから脳に何らかの機能的な障害があって引き起こされていると考えられています。
つまり生まれつきの障害であって、ストレスなどから引き起こされる心の病気ではありません。ストレスを発散するために、問題的な行動を起こしているというわけではないのです。
ADHDの人の脳を調べてみると脳内の神経伝達が乱れており、神経伝達物質である「ドーパミン」「ノルアドレナリン」の働きが低下していることが分かっています。
「ドーパミン」とは、自分自身の気持ちを緊張させたり興奮させたりコントロールするための神経伝達物質です。
「ノルアドレナリン」とは、注意することや学習すること、記憶することなどに影響する神経伝達物質であることが知られています。
つまり、これらの神経伝達物質が正常に機能しなくなると、勉強に集中できなくなったり、忘れ物をしないように注意することができなくなったりと「不注意」の部分が強くなります。さらに気持ちをコントロールして落ち着かせたり、順番を待って並んでいたりするようなことができない「多動-衝動型」の症状が強く現れてしまうのです。
ADHDの診断基準
ADHDの診断に用いる基準としてアメリカ精神医学会のDSM-5(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)があります。
そのなかには、「不注意型」によく見られる9つの症状と「多動-衝動型」によく見られる9つの症状が記載されており、そのなかで6つ以上の症状が6か月以上続いており、学校や社会において悪影響を及ぼしていることが述べられています。また成人においては少なくとも5つ以上の症状が必要だとされています。
「不注意型」によく見られる症状には、以下の9つの症状があげられています。
- 不注意な間違い
- 集中できない
- 人の話を聞いていないように見える
- 指示をやり遂げることができない
- 順序立てた活動が困難
- 嫌なことを避ける
- 物を失くす
- 気が散る
- 忘れっぽい
「多動-衝動型」によく見られる症状には、以下の9つの症状があげられています。
- 手足をソワソワ動かしてしまう
- 席についていなければならない場面でしばしば席を離れる
- 不適切な状況で走り回ってしまう(成人では落ち着かない感じのみのことも)
- 静かに遊ぶことができない
- じっとしていられない(成人では長時間とどまることを不快に感じる)
- しゃべりすぎてしまう
- 質問が終わるまでに答え始めてしまう
- 自分の順番を待つことができない
- 他人を妨害し邪魔してしまう(口出しや横取りなども)
これら「不注意型」「多動-衝動型」が12歳になる前から存在し、これらの症状が家庭と学校など別の場面においても現れていることによって、ADHDと診断されます。
ADHDの治療方法
ADHDの治療の中心は「薬物療法」と「カウンセリング」になります。
ADHDは生まれたときから脳に何らかの機能的な障害があって引き起こされていると考えられています。そのため症状に合わせた薬物治療が中心となり、勉強や人間関係、仕事などで困難を感じている場合には環境を調整するなど心理療法にも取り組みます。
カウンセリングにおいては、生活環境や人間関係、暮らし方などを見直し、どのようなことに困難を感じているのか聞きだしながら、具体的な解決方法を一緒に見つけていきます。
薬物療法
DHDでは脳内の神経伝達が乱れていることが分かっており、神経伝達物質である「ドーパミン」「ノルアドレナリン」の働きが低下しています。
一般的には「ドーパミン」「ノルアドレナリン」が不足しているために、「不注意」や「多動-衝動型」の症状が強く現れてしまうと考えられています。
そのためADHDの治療薬としては、下記の3種類の薬を用いられることになります。
- 注意欠如/多動症治療剤(選択的ノルアドレナリン再取り込阻害剤)
- 中枢神経刺激剤
- 選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬
これらの薬に関しては研究によってADHDの症状が軽減することが知られており、不安障害などの二次障害にも効果があるといわれています。
不注意や行動面の症状における治療では、抗うつ薬や抗不安薬を用いられることもあります。
また大人のADHDの治療には、「ストラテラ(選択的ノルアドレナリン再取り込阻害剤)」や「コンサータ錠(中枢神経刺激剤)」が多く用いられています。
カウンセリングなど心理・行動療法
治療に用いられる薬物については、あくまで対症療法ですから、薬物治療と並行してカウンセリングによって生活しやすい環境に整えていくことが重要になります。
子供に対しては日常生活のなかでどのようなことで困難になっているのか引き出しながら、行動療法によって少しずつ「自分でもできるんだ」という自信を持てるようにします。
好ましい行動を行った際には褒めるもしくは報酬を与え、好ましくない行動を行った際には過剰に怒るのではなく、報酬も与えず好ましい行動が増えるように、本人が分かるように伝えるようにしていきます。
また、大人に対しては暮らしや生活環境、人間関係などにおいて困難な場面を引き出し、実際にどのように工夫すればいいのか見直しを行います。具体的には次のような取り組みを行って、困っていることを解決していきます。
- 苦手なことがあれば、人に相談するようにする
- 指示を短く簡潔に出してもらうようにする
- 集中できるような環境にする
- 忘れないようにおく場所を決めておく
- 自分の特性を説明し、何度でも注意してもらえるようにする
- すぐに返事するのではなく、考えてから伝えるようにする
主に、生活環境や人間関係の見直しが重要になります。
ADHDや目に見えない精神疾患などの病は、周囲も理解しにくいことがあります。自身の特性を説明しておくことによって、周囲の環境は決して悪い方向だけではなく、良い方向に繋がる可能性が高くなります。
ソーシャルスキル・トレーニング(SST)
ソーシャルスキル・トレーニング(SST)とは
ソーシャルスキル・トレーニング(Social Skills
Training)は、日本では「社会的スキル訓練」、「ソーシャルスキル・トレーニング」、あるいは頭文字を取って「SST」と呼ばれています。精神科領域では、「(社会)生活技能訓練」と呼ばれています。
ソーシャルスキル・トレーニングは、社会で生きていくための集団行動や人間関係をうまく営むためのスキルをトレーニングすることをいいます。
ソーシャルスキル・トレーニング(SST)の対象者
うつ病、統合失調症などの精神障害やADHD、自閉症スペクトラム障害、学習障害などを含む発達障害は、それぞれの本質は異なるものの、共通して社会性の問題を呈することが多いとされています。
その中でも、自分の行動をコントロールするのが苦手な方、指示を理解したり判断したりするのが苦手な方、人とのコミュニケーションが苦手な方などといった人との関わりが困難な人が対象となります。
ソーシャルスキル・トレーニング(SST)の方法
1. ゲーム
ゲームには、決まったルールと勝ち負けの結果を受け止めることやチームプレーで相談や協力したりと、ソーシャルスキルの要素が含まれています。
ゲームを楽しみながら社会性も身に付けられるのでとても有効な手段といえます。
2. 共同行動
共同行動には、他人と相談や協力をして役割分担や助け合いをしながら社会生活に必要なスキルを身に付ける方法です。
工作や料理などの「工作で何かを作って遊ぶ」「調理で何かを作って食べる」という明確なゴールに向かう途中で人との関わりをもちながら社会性を育みます。
実体験を交えてソーシャルスキルを身に付けていきます。
3. ディスカッション・ディベート
ディスカッション・ディベートには、コミュニケーション能力を向上させるトレーニングができます。
人と会話することで、会議などで議題を踏まえた上で自身の意見を述べる場面や議論する場面などに役立てられます。
4. ロールプレイ
ロールプレイは、日常生活のさまざまな場面でどのような行動が適切であるかを身に付けます。参加者同士や指導者が実際に演技をしたり、人形などを用いたりして日常生活の中での適切な行動を学びます。
課題となる言動や場面を多少アレンジして行うことがより有効といわれています。
5. ソーシャルストーリー、ワークシート、絵カード
ソーシャルストーリーとは、絵と絵柄が表している出来事が短文で書かれたテキストのことをいいます。ソーシャルストーリー、ワークシート、絵カードを用いることで、参加者本人の言動を意識化していくこともソーシャルスキル・トレーニング(SST)の方法の一つです。子どもの場合は、指導者が読み聞かせたりもします。
ソーシャルスキル・トレーニング(SST)の効果
初めは戸惑いなどもあると思いますが、ソーシャルスキル・トレーニング(SST)を受け続けていくことで、挨拶や報告、連絡、相談もスムーズにできるようになっていくといわれています。会議や人前で話すこともでき、自信に繋がります。
また、ソーシャルスキル・トレーニング(SST)をより効果的にするためには、ソーシャルスキル・トレーニング(SST)に意欲を持って取り組み、教わるソーシャルスキルと現状が合っているか、トレーニング方法が間違っていないか、楽しい雰囲気でできているか、実体験の中で活かせるようにフィードバックできているかなど意識して取り組んでいくことも大切です。
困っていることや不安に思うことがあれば、専門の指導者と相談しながら進めていくことが大切といえます。
ADHDのお子様への
サポート・接し方(注意点)
初めは戸惑いなどもあると思いますが、ソーシャルスキル・トレーニング(SST)を受け続けていくことで、挨拶や報告、連絡、相談もスムーズにできるようになっていくといわれています。会議や人前で話すこともでき、自信に繋がります。
また、ソーシャルスキル・トレーニング(SST)をより効果的にするためには、ソーシャルスキル・トレーニング(SST)に意欲を持って取り組み、教わるソーシャルスキルと現状が合っているか、トレーニング方法が間違っていないか、楽しい雰囲気でできているか、実体験の中で活かせるようにフィードバックできているかなど意識して取り組んでいくことも大切です。
困っていることや不安に思うことがあれば、専門の指導者と相談しながら進めていくことが大切といえます。
大人のADHDにおける
日常・仕事への対策
大人のADHDの場合には子供とは違って、衝動的に走り回るようなことは見られなくなりますが、集中して物事に取り組めないということがあります。
そのため仕事に上手く取り組めなかったり、スケジュールを忘れてしまったり、出されている指示が分からなくなったりすることがあるのです。
そのような自分自身が持っているADHDの特性を掴みながら、それらをカバーできるような工夫を生活に取り込んでいくことが大事です。
例えば集中して勉強や仕事に取り組めないようであれば、まわりのポスターなど集中できなくなる要素を取り除くことも一つです。また忘れないように持ち物はいつも同じ場所においておくとか、スマートフォンのリマインダー機能を活用することもいいでしょう。
また自身の特性を会社の同僚や上司に伝えておき、指示を簡潔に出してもらうように工夫してもらうこともできます。
そのように環境の見直しを行っていくことで、生活しやすさを実感できるようになります。
男性は多動/衝動性、女性は不注意が強い傾向あり
ADHDの男女差について
ADHDの人の特徴として不注意と多動/衝動性の2つが挙げられます。
その特徴の出現強度は男性、女性とで異なる傾向があるようです。
男性の場合、多動や衝動性の特徴が強く、女性の場合は不注意の特徴が強く出る傾向にあるといわれています。
男性に多い多動や衝動性は「学校で席にじっと座っていることが難しかった」など周囲に分かりやすく、気づかれやすい一方で、女性の場合は「授業中に考え事をしていて指示されたことに適切な反応ができない」など不注意から起こる行動は周囲から分かりづらく、気づかれにくいとされています。
そのため、職場や家庭などではADHDの女性は見過ごされやすい理由の1つとして考えられています。
また、女性の場合は「おしゃべり」がADHDと見過ごされやすい原因の1つでもあります。会話の中で周りの反応を気にすることなくしゃべり続けてしまうように、会話などの行為に現れることが多く、ADHDの典型的なじっとしていられないイメージを固定してしまうと、他の日常生活で出ているADHDの徴候に気付かないこともあります。
男性のADHDは集団行動でトラブルを起こしやすい
ADHDの男性の場合、多動と衝動性が強く出る傾向があります。
必要もないことに首を突っ込んでみたり、言わなくてもいいのに相手の気に障ることを言ってしまったりと職場や学校、日常生活などでトラブルを起こしやすいと考えられています。そのため、社会生活や学校生活になじめないと進学や昇格などに支障が出てしまい、引きこもりになってしまうことも少なくはありません。
また、ADHDと見過ごされやすい理由の1つに、幼少時代が関係することもあります。
子どもの頃に多動でじっとしていられない徴候があっても「男の子だから元気がある」という考え方から多めに見られてしまうこともあります。
行動の修正する機会を失ってしまうとそのまま大人へ成長していきます。
そして、職場で集中して作業に取り組むよう指示されても、うまくいかないことで初めて問題が表面化するということが現状です。
女性のADHDは女性らしさを求められて辛い
ADHDの女性の場合、不注意が強く出る傾向があります。
細やかな気遣いが求められる職場では「気が利かない」などと周囲からネガティブな反応をされることも少なくはありません。
幼少時代は「不思議ちゃん」や「少し抜けている」程度で見過ごされることがあります。
そのため、支援が遅れて大人になってしまうことで本人も苦労してしまうことがあります。
しかし、成長にしていく中で周囲がネガティブなイメージで接していくと、自己肯定感が低くなり、うつ病などの二次障害を発症する場合もあります。
周囲が「女性だから家事ができて当然」「女性だから細やかな気配りができて当然」などといったイメージを持ちすぎてしまうと、職場や家庭に生きづらさを感じてしまうこともあります。また、できない自分を責めることもあります。
このように、男性は多動と衝動性の傾向が多く落ち着きや言動が社会生活に影響が出てしまったり、女性の場合は不注意の傾向が多く見られ、求められる女性像にうまく適応できないことがあります。
ADHDは、男女ともに大人になっても社会にうまく適応できないことが少なくありません。日常生活や社会生活に生きづらさ、難しさを感じている場合は発達障害に詳しい医療機関や支援機関に相談してみましょう。
専門の医療機関を利用し、働きやすくなるため、生きやすくなるためのヒントを得ることも重要といえます。
ADHDについて
よくいただくご質問
- 自分の子供がADHDのように思うのですが・・・。
- まず心療内科や精神科の病院やクリニック、精神神経科などの専門医に相談することをお勧めします。受診の際にはお子様の行動や様子が分かるように記録やメモがあれば状態が理解しやすくなります。また母子手帳、保育園や小学校での連絡帳なども参考になることがあります。
- 大人になって初めて診断を受けるのですが・・・。
- 心療内科や精神科の病院やクリニック、精神神経科などの専門医に相談して治療を受けましょう。大人の発達障害の専門医を紹介される場合もあります。
- ADHDの治療はどのようなものでしょうか?
- 一般的な治療は「薬物治療」「カウンセリングなど心理・行動療法」が中心となります。薬物治療によって脳の神経伝達をスムーズにすると同時に、心理・行動療法によって適切な行動を学んでいきます。
- ADHDの薬はいつまで続けなければならないのでしょうか?
- ADHDを治療するための薬は、必ずしも一生飲み続けなければならないものではありません。学校や家庭での生活に困ったことが少なくなってきて、自信を持って社会生活を営めることが大事です。焦らずに治療に取り組み、自分の個性を活かして生活できるようになることを考えていきましょう。
- ADHDでの相談やサポートはどこにいけばいいのでしょうか?
-
発達障害者支援センターや地域療育センター、精神保健福祉センター、自治体の福祉担当窓口において、日常生活のさまざまな相談に応じてくれます。仕事についての相談は、地域障害者職業センターやハローワークで応じてくれます。
また、地域にある民間支援団体や家族会、当事者会なども情報交換やアドバイスを聴くことができます。
ADHDと二次障害について
ADHDは、うつ病をはじめとする精神疾患による「二次障害」が起きやすい病気といわれています。ADHDを背景に持つ二次障害は、うつ病・不安障害・双極性障害(躁うつ病)・素行障害(行為障害)・反抗挑戦性障害などが挙げられます。
二次障害はいわゆる「合併症」とも言われ、もともとあった障害がきっかけとなり起こる障害をいいます。
子ども時代に、生まれつきの特性としてADHDを見過ごされた場合、大人になったときにADHDの症状からコンプレックスを抱くようになることもあります。周囲の人から疎まれたりすることで、「みんなと違う」といった偏見がストレスや不安に繋がり、うつ病などを発症してしまう可能性が高くなります。
また、二次障害の症状を訴えることにより、もともと背景にあるADHDが診断されにくくなる場合もあります。
ADHDによって、子ども時代から孤立を経験したり、精神的に不安定で孤独感を感じたりすることがあります。引きこもり気味や落ち込むことが多くなった場合は、早めに心療内科や精神科のクリニックを受診しましょう。
ストレスやうつ症状について
ぜひご相談ください!
うつ病を合併した場合
品川メンタルクリニックは、うつ病専門のクリニックです。
患者さんの中には、二次障害で合併したうつ病治療を行う方も多くいます。うつ病の治療でよく知られているのは「薬物療法」です。薬物療法は効果もありますが、人によっては副作用に悩まされることも少なくはありません。
また既に、ADHDの治療を薬物療法で行っている場合、薬が増えることもあります。薬は体内に直接取り込むので、効果があったとしても、副作用によって心身に負担がかかる場合もあります。
品川メンタルクリニックでは、薬物療法のそういった副作用から患者さんを解放すべく、薬を使わない治療法「磁気刺激治療(TMS)」を提案しています。
品川メンタルクリニックは「磁気刺激治療(TMS)」の専門クリニックです。
磁気刺激治療(TMS)は、磁気を脳に当てて治療する方法で、12歳(中学生)※以上でしたら基本的にどなたでも受けることができます。入院の必要がなく、副作用もほとんどないので、心身に負担の少ない治療法を希望する患者さんにお勧めです。少しずつ効果が出始める治療ですが、治療期間も1ヶ月半~6ヶ月と短期的に集中して治療が行えます。実際にADHDとうつ病を発症した患者さんが「磁気刺激治療(TMS)」を受けることで改善しています。
※診察は10歳以上から受けられますが、TMS治療が対象かどうかは医師の判断になりますのでご了承ください。
短期間の治療が可能です!
薬に頼らない新たなうつ病治療があります!
品川メンタルクリニックでは12歳(中学生)※以上を対象に、うつ病を併発しているかどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
※診察は10歳以上から受けられますが、光トポグラフィー検査・TMS治療が対象かどうかは医師の判断になりますのでご了承ください。